KEIO MCC

慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

夕学レポート

2008年04月14日

顧客を有機的に育てる 井上哲浩さん

消費者意識の成熟と情報化社会の進化は、企業と消費者間の「情報の非対称性」を逓減させることになりました。
未熟な消費者を前提にした伝統的なマーケティング(例えばマス広告、企業ブランド、メーカーによる流通支配等々)が限界を迎え、新しいマーケティングのあり方が求められるようになりました。
例えばそのひとつに、ピンポイントマーケティングがあります。
分かりやすく言えば、「欲しい人に、欲しいモノを、欲しい時に提供する」ことを目指そうというものです。
Amazon.comに代表されるリコメンデーション機能やそれを支えるデータマイニングなどの技術がそれにあたります。
井上先生は、その方面の先端的な研究者でもありますが、それゆえに、ピンポイントマーケティングの問題点にも気づいたと言います。
先端的なリサーチ理論や情報技術を、「顧客を刈り取ること」だけでなく、「顧客を育てること」に使うべきではないかという発想です。
井上先生は、顧客を有機的に育てていくという意味を込めて「オーガニックコミュニケーション」と呼んでいます。


井上先生は、「商品が難しくなった」と言います。
成熟した消費者を相手にすることで、商品・サービスの特徴は高度化・複雑化していきます。その結果、ベネフィットを、詳しく説明しないと理解してもらえなくなってきたというわけです。
また、ネットという新たなメディアの登場により、価値を顧客に伝達するメディアの多様化が進んでいます。
メディアの特性を明確にし、伝えたい目標と適切に組み合わせて使いこなすこと。しかもそれを感覚的に捉えずに、データに基づいたサイエンスベースドに行うこと。
井上先生は、これを「クロスメディアマネジメント」と表現しました。
ここで求められるのが先述の「オーガニックコミュニケーション」の考え方です。
オーガニックコミュニケーションには、まず顧客の「知識の構造化」を促すことが必須だと井上先生は考えています。
「知識の構造化」とは、商品の持つ複雑な価値を、顧客が自由に推論をふくらませながら、連結させ、自分にとっての意味づけを確立してもらうことを意味します。
また、「知識の構造化」のためには、コミュニケーションメッセージが「ソサイアタル(societal)」で「共感」につながるものでなければならないそうです。
自分一人にとって意味があるのではなく、社会全体に意味があること。
志を同じくする人々と一緒に、その意味を追究できること。
理屈ではなく、実感として共鳴できること。
そんな感じでしょうか。
オーガニックコミュニケーションミックスの具体例として紹介された事例のひとつが下記です。
<Volvic 1ℓ for 10ℓ>
http://www.volvic.co.jp/1Lfor10L/top.html
皆さん、どんな感想を持たれるでしょうか。
また、オーガニックに顧客を育てていくには、メディアを目的に合わせて適切に使いこなすことが重要だと言いましたが、井上先生の実証研究の結果から、次のようなことが言えるとのこと。
新聞メディア:社会性、信頼性の高さから、「土壌作り」に効果的
テレビメディア:リーチに力を持つことから、「種まき」に有効
ネットのHPやブログ:理解を深めるという意味で「耕し」に使える
店頭や現場:クロージングをする場として、「収穫する」
なるほどという感じがします。
井上先生のお話は、難解な部分も多く、理解は十分ではありませんでしたが、新たな顧客との関係をどうのように構築していくのかを考える上において、示唆に富んでいたのではないでしょうか。

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