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夕学レポート

2012年01月25日

真似の出来ない生き方をすれば、真似の出来ない会社が育つ  宗次徳二

宗次徳二
「CoCo壱番屋は、なぜ一人勝ちできるのか?」
外食産業の業界人、コンサルタントの間で、七不思議のひとつとして語られる疑問だという。
牛丼チェーンなら吉野屋・すき家・松屋。ラーメンチェーンは幸楽苑・リンガーハット・日高屋。開店すしチェーンだったら、かっぱ寿司・スシロ-・くら寿司などなど。
主な外食産業は、チェーン展開する大手が必ず複数あって、激烈な競争を繰り広げている。
その中にあって、カレー専門店チェーンは、CoCo壱番屋の店舗数約1300店が突出しており、調べた範囲では、それに続くのはゴーゴーカレー(知ってましたか?)の39店とのこと。
「柳の下にドジョウは三匹いる」と豪語した経営者を知っているが、通常なら、どこかが成功すれば(市場を拓いてくれれば)そこに参入するライバルが現れるものである。カレーのような国民食であればなおのことであろう。
宗次さんによれば、これまでに、上場している大手外食産業4~5社がカレー専門店に参入してきたというが、ひとつも成功していないという。
資金力、食材調達力、チェーンストアノウハウ、人材etc、外食チェーンを成功させるKFSと言われるものはいくつかあるが、CoCo壱番屋のコアコンピタンスは、そのどれでもないようだ。
CoCo壱番屋の強さの不思議を体現しているのが、創業者の宗次徳二氏であろう。とにかく異端の人である。
経営はすべて自己流。戦後の小売・サービス業の成功者達が、必ずといって参考にしてきた米国流のチュエーンストア理論を一切信じていない。
船井総研や、タナベ経営、日本リテイリングセンターといった、この業界に精通すると言われるコンサルティング会社の指導を仰いだことは一度もない。(呼ばれれば喜んで講演するそうですが)
全てが我流。それでいて会社は一貫して成長し続けてきた。
宗次氏の発言も、経営学でいう「よい会社」の理論をすべて否定するものである。
・明示的な経営理念や社是は掲げない。
・長期的な経営ビジョンは描かない、夢などいらない。
・先のことは考えない。いまだけを見る。
・ライバルのことは一切気にしない。
・価格競争は絶対にしない。
・お客様の声は謙虚に聞くが、値下げ要請は断固拒否する。
社長が誰よりも早く起きて、誰よりも多く仕事をして、贅沢はせず、遊びにも背を向け、会社や店の回りを一生懸命に掃除して、社会貢献に尽くし、仕事と会社に自らの全てを捧げる。引き際は潔く、子供を後継者になどしない。
それを何十年もやり続ければ、必ず成功する。ココイチが強い理由は、簡単なこと。他の会社では、社長がこれをやり続けることができないからだ。
講演の要旨は、そういうことであった。
一代で大企業を育て上げた創業経営者は何人もいる。
恵まれない環境で生まれ育った経験をバネに立派になった人も何人もいる。
365日、24時間仕事をすると豪語する社長も何人かはいる。
しかし、ここまで清々しく、真っ直ぐに、楽しそうに生きている経営者はいるだろうか。孤児院で育ち、養父にも恵まれなかった極貧の過去を、「実は、賢きところのご落胤かもしれないと思っているのです...」と笑いに変えるウィットもある。
経営者が真似の出来ない生き方をすれば、真似の出来ない会社が育つ。そういうことであろう。

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