夕学レポート
2012年02月10日
古代ギリシャが見いだした三つの精神世界
夕学がない間の埋め草として、夕学プレミアムagoraで学んだことを書きたい。
私は、「阿刀田高さんと読み解く【古代ギリシャ・ローマの智恵】」に、半分受講生として参加したが、実に面白かった。
古代ギリシャの精神には、三つの世界観があったようだ。
ひとつは、「アポロン的世界」
ギリシャ神話のアポロンは太陽神。知的文化的活動の守護神だとされる。
アポロン的世界とは、明るい陽光に映える健康的な世界である。正統、明朗、調和といった言葉で象徴されるものだ。
ふたつ目は、「デュオニソス的世界」
デュオニソスは酒の神。ローマ神話ではバッカスと呼ばれる。酩酊の神である。
デュオニソス的世界とは、渾沌と倒錯を蔵した深淵なる世界である。異端、陰鬱、不調和といった言葉で象徴される。
三つ目は、「ソクラテス的世界」
言わずと知れた古代ギリシャの哲人。
ソクラテス的は、論理と合理性の世界であり、突き詰めたところには、ロゴス(根源的な原理)があると考える。
古代ギリシャといえば、すぐに思い浮かぶ彫刻や建造物はアポロン的な精神が産み出した芸術所産である。
いまも世界中で演じられているギリシャ悲劇(例えばこれやこれ)は、アポロン的精神とデュオニソス的精神の相克と葛藤がテーマになる。
近代西洋文明は、一度は忘れ去ったソクラテス的な知性を、ルネッサンスによって、再発見したことからはじまった。
古代ギリシャが見いだした三つの精神世界は、多くの芸術や文明を作りだし、いまも脈々と息づいている。
いや何も、芸術や文化に限ったことではない。古代ギリシャから2500年が経た現代に生きる私たちも、日々の生活の中で、三つの世界を行ったり来たりしている。しかも一日のうちに何度も。
朝の食卓では、子供達にアポロン的な教訓を垂れ、会社では、ロゴスを振り回して「あるべき姿」を説き、夜の街では、悪友とデュオニソスの世界に浸る。
人間とは、そういう多面的で多義的な生き物である。
アポロンが過ぎると「つまらない」人間だといわれ、デュオニソスが過ぎれば「いい加減なヤツ」だと烙印を押され、ロゴスばかりだと「理屈っぽい」と嫌われる。
しかしながら、それを越えて突出することで、「才能」と呼ばれる。
全部がほどほどだと、「凡人」で終わる。
まことに人間とは面白い生き物だと思う。
その本質を、すでに見透していた古代ギリシャの知恵には敬服するばかりである。
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