夕学レポート
2012年06月08日
大人げない大人 成毛眞さん
夕学には、外資系IT企業の日本法人トップを務めた方が、何人か登壇してきた。
平松庚三さん、村上憲郎さん、前刀禎明さん、辻野晃一郎さん等々。
平松さん、村上さんは全共闘世代。
「戦う世代」らしく、パッションに満ち、挫折体験をエネルギーの変えてきたという自負が感じられた。
「熱きストラテジスト」 平松庚三さん
パトスの論理 村上憲郎
前刀さん、辻野さんは、新卒でソニーに入ったという共通点がある。
二人とも、スマートな紳士ながらも、黄金時代のソニーで鍛えられた人ならではの「こだわり」がある。
日本の素晴らしさを世界に向けて発信するという強い意志である。
「感じる」「創る」「動かす」 前刀禎明さん
21世紀の日本発イノベーションとは 辻野晃一郎さん
成毛眞さんは、平松・村上世代と前刀・辻野世代の真ん中にあって、まったく異なる個性をもった人だ。
「シニカル」 「反主流」 「好きなことをやる」
そんなキーワードが頭に浮かぶ。
「正直言って、飽きた」
12年前、マイクロソフト日本法人の社長を退く際に言ったコメントがそれを象徴しているかもしれない。
この数年の著書も
『日本人の9割に英語はいらない』『就活に日経はいらない』というショッキングなタイトルである。
誰もが知っている有名人だけに、随分と波紋を呼んだという。
「これからの時代は○○だと言われると、ついつい反論したくなる」というのが性分とのこと。
とりあえずは常識とされるもの、主流とされるものに対して否定から入る。
そうせずにいられない人らしい。
成毛さんは自らの人生を説明する際に、「プランドハップンスタンス理論」を引用された。
私は、何十回となくこの理論を引用するキャリア論を聞いてきたが、成毛さんが使うと飛び抜けた説得力がある。
「プランドハップンスタンス理論」では5つの特性が提示されている。
好奇心、持続性、柔軟性、楽観性、冒険心。
持続性を除けば、全て子供が持つ特徴だと、成毛さんは言う。
言い換えれば「大人げない大人」であること。
ビル・ゲイツも、スティーブ・ジョブズも、いつまでたっても「大人げなかった」という。
もちろん、成毛さんも「大人げない大人」であろう。
しかし、「大人げない大人」で、本当にどうしようもない人間も、世の中にはたくさんいる。
成毛さんだって、好奇心趣くままに、好き勝手にやってきたわけではないだろう。
人よりも一歩先に時代を読むことが出来るという自信があるに違いない。
11年前、プライベートエクイティという言葉を誰も知らなかった頃に、投資コンサルティングを標榜するインスパイア社を立ち上げた。
「ドメスティックな伝統産業にITソリューションを入れれば間違いなく甦る」
2001年に夕学に登壇いただいた際に、自信ありげにそう語った姿をよく憶えている。
我が国に、産業再生ファンドが次々と立ち上がったのは、それから数年後であった。
いま、成毛さんが書評サイト「HONZ」を語る姿は、嬉々としている。
インスパイアのビジネスモデルを話してくれた11年前に似ている。
大好きな本を通して、何か面白そうなことが出来つつあるという自信に満ちているようだ。
「運の総量は決まっている」
成毛さんはそう考えているという。
だから、大切な運を無駄遣いしないために、ギャンブルはしない。
マイクロソフトでも、インスパイアでも、数々のベストセラーでも使い切っていない運がまだ十分残っている。
そちらの方にも自信があるのかもしれない。
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