夕学レポート
2012年06月12日
本田直之「7つの制約にしばられない生き方」
東京とハワイの両方に拠点を持ち、一年の半分はハワイ、というデュアルライフを送られている本田氏。レストランや小売店など複数の企業を経営するかたわら、30冊以上の著作を出し、その販売累計点数は約200万部に達しています。一方、プライベートでも、経営者を中心とするトライアスロンのチームを主宰し、ご自身もトライアスロンに挑戦し続けている本田氏は、ビジネスパーソンが理想として憧れる存在です。今回、本田氏は、彼のようなライフスタイルを確立するための秘訣を伝授してくれました。
本田氏は、若い頃からしばられることが嫌いだったそうです。しばられること、すなわち「制約」から自由になるためにはどうすればいいかをずっと考えてきたのです。実は、制約の多くは、私たちが今生きている現代の工業化社会では、「常識」や「当然のこと」として受け入れていることだと、本田氏は指摘します。それらには大きく7つあります。
(1)時間
多くの会社ではまだ9-5時といった働く時間が決められています。
(2)場所
多くの会社では、オフィスと言う決められた場所で働くことが求められます。
(3)人
上司、同僚など、誰と一緒に仕事をするかを自由に決められることはほとんでありません。
(4)金
会社勤めでは、報酬も一定の規定内。独立事業者のように工夫次第で報酬を柔軟に増やすことはなかなか難しいものがあります。
(5)働き方
どのように仕事に取り組むのかについても一定の制約があります。
(6)服装
どんな服装でもOKという職場はまだ少ないでしょう。
(7)思考(考え方)
考え方もまた、一定の枠組みに固定されがちです。
私たちが普段、「常識」として受け入れていることは、本田氏によれば、「他人が自分の都合の良いように作ったもの」です。会社組織で言えば、「雇用者」が「被雇用者」を管理しやすいように、労働時間や勤務地、服装規定等を定め、それを被雇用者に守らせようとしているわけです。
しかし、本田氏は、現代は上記の7つの制約から自由になることができる時代だと主張します。IT化の進展、モバイル環境の充実などで、時間や場所などにしばられないで働けるインフラが整ってきたからです。本田氏自身、東京とハワイを行き来しながら、プールサイドでパソコンを開いたりと、いつでもどこでも仕事ができる環境を活用しています。
さて、前述したように、本田氏は以前からしばられるのが嫌いだったため、常に「受けたくない制約はなにか」、そして「その制約から逃れるためにはどうしたらいいか」ということを考え、実践してきています。このように「どうしたらできるか」と考えることを本田氏は、「工夫行動思考」と呼んでいます。
一方、「会社の決まりだから」などと現状を変えようとせず言い訳ばかりをしてしまうことを「言い訳思考」と呼びます。本田氏は、こうした思考の違いは、性格やスキルの問題ではなく、単なる「クセ」だと考えています。学校や家庭でも、「工夫行動思考」をきちんと教えてくれるわけではありません。言い訳思考も、工夫行動思考も、日々の生活の中で自然に身についた「クセ」に過ぎないのです。ですから、性格やスキルを変えるのは簡単でありませんが、「言い訳思考」を「工夫行動思考」に変えるのは一瞬にしてできることです。
では、自分にとって受けたくない制約から自由になるにはどうしたらいのでしょうか?まず、3つの考え方を本田氏は示しました。
(1)覚悟
制約を受けないためには、なんらかのリスクをとる覚悟が必要です。
(2)捨てるもの
何が大事か、逆にいらないものなのかを見極めなければいけません。
(3)準備
本田氏のように東京とハワイに住み、働く場所を自由に選択できる環境を手にすることは一朝一夕にできることではありません。すぐに結果を求めず、何年も時間をかけて準備をすることが必要です。
そして、本田氏はなにより、思考をストレッチする、つまり考え方を柔軟にして、どうやったら制約を受けない環境を実現できるかを考えることだと強調します。
さらに、しばられない生き方に必要なスキルとして本田氏が示したのが以下の5点です。
(1)タイムマネジメント
時間にしばられないためには、自分自身で時間を管理する必要があります。そして、楽にやろうという考え方ではなく、同じ努力、時間を割くのなら、そこからより多くの成果を得るためにどうしたらいいかという発想で時間を有効に使うべきだと本田氏は考え、実践してきたそうです。
(2)ノマドリテラシー
これは本田氏の造語だそうですが、各種データやファイルをインターネット上で共有できる仕組み(俗に「クラウド」と呼ばれています)や、無線LANなどのモバイル環境を駆使して、いつでもどこでも仕事ができるスキルです。
(3)セルフモチベーション
仕事のやる気などを常に他人からもらい続けなければならないのではなく、自分で自分を動機づけるスキルもまた、しばられない生き方を貫くためには必要なことです。
(4)セルフマネジメント
例えば自分の会社を経営するかのように、自らを管理できるスキルを高める必要があります。
(5)パーソナルブランド
会社組織に属さない生き方を選ぶのであれば、個人として名前を知ってもらい、仕事を獲得するためのマーケティング活動、つまり、「パーソナルブランド」を確立する努力が欠かせません。
そして、本田氏が教えてくれた制約を受けないための具体的な実践方法も5つあります。
(1)住む場所
人は案外気楽に住む場所を選んでしまいますが、住居を購入するとなったら、日本の場合、住居の資産価値が目減りすることが多いので慎重に選ぶ必要があります。また、自分の理想のライフスタイルを実現するという視点からも、住む場所を吟味すべきと本田氏は言います。
(2)会社以外の仲間
会社以外の仲間との付き合いを増やすことで、「井の中の蛙」になることなく、多様な考え方、生き方に触れることができ、思考が柔軟になります。
(3)モノを減らす
自分が持っているものが多いと、それ自体が制約となります。本田氏自身、今年は、「リセット、リデュース、リビルド」という目標を掲げモノを減らしてきました。モノを減らすよい機会となるのが引越しです。本田氏は、東京、ハワイ、そして事務所の3箇所とも今年引っ越しをしたおかげで、モノを大幅に減らし、すっきりとした住環境を実現したそうです。
(4)お金の使い方
お金のもうけ方の指南書はたくさんありますが、お金の使い方を教えてくれる人はほとんどいませんし、意外に皆、考えていないものです。ですから、収入に関わらず、賢くお金を使うトレーニングを自分で積む必要があります。本田氏は米国留学経験がありますが、留学費用を捻出することから始まり、留学中はマクドナルドにも行けないほどのギリギリの生活を強いられたことによって、幸いにも「お金の使い方」を学ぶことができたそうです。
(5)複数のフロー
これは、複数の収入源を持つということです。一般的に、会社は複数の顧客を抱えています。顧客が仮に1社だけだったとすると、その1社が倒産してしまったら大変なことになりますし、競合他社が安い取引価格を提示してきたら、同等の安い金額を提示せざるを得なくなり、経営が苦しくなります。同様の状態にあるのが、会社勤めのビジネスパーソンです。本田氏は、会社の副業規定も緩和されつつあることから、勤め先以外にも収入源を持つ「複業」を勧めています。
本田氏の説く「しばられない生き方」のためには、なにより「工夫行動思考」へと考え方を転換することが必要ですが、参加者からの「どうやって転換できるか」という質問に対し、本田氏は、まずは「無理やり考えてみることだ」と答えました。とにかく「どうしたらできるか」を意識的に考えるようにすることで、工夫行動思考がクセとして身についていきます。
本田氏の講演をきっかけに、今後の生き方が大きく変わる参加者もいるかもしれません。
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