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夕学レポート

2012年07月20日

知を産み出す職場とは 妹尾大さん

photo_instructor_620.jpg日本発で、世界で認知された経営学理論はそれほど多くはない。
数少ないひとつが野中郁次郎先生等が提唱する「知識創造理論」であることに異論を挟む人はいないであろう。
知識創造理論は、「知識を創造する装置」として組織を捉える。暗黙知と形式知の二種類の知識を定義し、その相互交換プロセスを循環させることで知識は創造されるとする。
「SECIモデル」という概念図はあまりに有名である。
SECICycle.jpg
野中先生の愛弟子のひとりである妹尾大氏が、知識創造理論の知見をベースにして、学者生涯を通して追求するテーマは、
「個人と組織の動的プロセスに関する理論構築」
だという。
ひらたくいえば、「個人は、組織とのかかわりのなかで、どうやってヤリタイコトを見つけ、どうやってそれを実現していくのか?」を明らかにすることである。
妹尾先生が着目したのは、職場(オフィス)であった。
物理的な環境としての職場(オフィス)というよりは、そこで働く人々が相互作用の中で何らかの意味を生成するような心的駆動力をもった意味空間としての職場(オフィス)である。
私たちが、仕事上の課題に直面するときに、職場で同僚や他の職場の人々と刺激し合い、アイデアを出し合い、それを共有化し、自分のものとして練り上げて解決策を作り出していく、そんな創造的なスパイラルループを産みだしていくためにはどうすればよいか、ということであろう。
妹尾先生は、研究当初はオフィスの空間・環境=ワークプレイスを変えることに着目した。
レイアウトやパーテーション、ミーティングスペースなどを工夫することで職場がどう変わるのかを研究した。
当然ながら、ワークプレイスの変更がもたらす成果は限定的であった。
ついで、働き方(ワークスタイル)にも着目した。
個人が動き回り、異質な知と交流し、それを巻き込んでいくような働き方をすることが重要だと考えたからだ。
ワークプレイスの変更は、創造的なワークスタイルと相互作用することではじめて機能する、と考えた。
いまは、職場で働く人々の主体性に着目している。
外部の専門家が理想的なオフィス空間を設計し、あるいは創造的な働き方を提唱して、それを人々が受け入れることで変化が起きるのではない。
自分たちが当事者として、より創造的なオフィスを作ろうとするプロセスを自主形成することが鍵になると考えている。
創造的な仕事をしたいと志向する個人同士が、ワイワイガヤガヤと議論することで、
既成概念を取っ払い、新しいやり方に柔軟に取り組むことで、
ヤリタイコトは見つかるし、実現への道筋も見えてくるはずだ、と考えている。
クリエイティブオフィス、クリエイティブワークスタイルという普遍的なものがあるわけではない。 よりクリエイティブにするためにどうすればよいか、という工夫のプロセスが知識創造の母体である
プロセスは動的なものである。常に駆動させていなければならない。
駆動には動力源が必要である。
経営の目的は何か、私たちは、なぜ働くのか。
それ以上の動力源はない。だとすれば、その思いの強さと純度が全てを決めるのではないかと思う。

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