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夕学レポート

2013年04月24日

お金は大事だ、よく考えよう  橘玲さん

photo_instructor_672.jpg「未来は誰にも予想できない。なぜなら市場は複雑系の”小さな世界”だから」
「無数の参加者が、それぞれの思惑で勝手に行動する。こういう現象を予測することは原理的に不可能なこと」
橘玲さんは、そう前置きしたうえで、市場でどんな事が起きり得るのか、将来のシナリオは限定できる、という。
1.楽観シナリオ アベノミクスが成功し、経済成長がはじまる。
2.悲観シナリオ デフレ不況がまだまだ続く
3.破滅シナリオ 日本国の財政が破綻する
のいずれかである。
シナリオに沿った資産防衛策を考える際に、橘さんの基本スタンスは明解である。
「マクシミン戦略」
最悪の事態を想定して、その場合の最善の対策を考える、ことである。
マクシミン戦略は、極めて保守的な戦略であり、間違っても大富豪にはなり得ないが、リスク耐性の低い個人には相応しい戦略だというのが、橘さんの見解である。
さらに、もうひとつ考慮しておくべきことは、
経済には強い粘性がある、という特性だという。
ある日突然経済が悪化することはない。かならず兆候があり、段階を踏んで悪くなる。その変化を見落としさえしなければ、手は打てるということである。
もし仮に、日本が財政破綻するとしても、下記の段階を踏んでいくだろう。
第1ステージ 金利が上昇する(国債の下落)
第2ステージ 深刻な金融危機が発生する
最終ステージ 財政破綻が起きる ハイパーインフレとなり、預金が封鎖され、日本がIMF管理下に置かれる
仮に破滅シナリオを歩むとしても、いまがどの段階なのかを見極めて、適切な手を打てば大切な資産は防衛できる、ということだ。
これが、橘さんの考える「先の見えない時代の生き方」である。
さて、それでは各シナリオに応じて、私たちはどのようにして資産を守ればよいのだろうか。


橘さんは、楽観シナリオはもちろんのこと、悲観シナリオになったとしても、「普通預金」が最強の金融商品であると断言する。
経済成長で給料が増え、年金財政が安泰になれば、個人は無理をして資産運用する必要などない。
たとえデフレが続いたとしても、生活コストも下がり実質金利は高くなるのだから、現金の使いでも増えていくことになる。
更にいえば、破滅シナリオの第1ステージ=金利上昇(国債下落)の局面でも「普通預金」は最強であるという。金利が上がれば預金金利も上がる。ある程度のリスクヘッジが可能になる。
どうやら、すぐに証券会社の店頭に走る心配はなさそうだ。
ただし、最悪の事態の手立てを考えておくことが必要だ。国家破綻に備える思考シミュレーションは重要である。
国家破綻は、いつ起きるかは分からないけれど、何が起きるのかは予測できる。
橘さんによれば
1国債の下落(金利の上昇)
2円安
3インフレ
の三つが起きるはずである。
であれば、それぞれに手立てを想定しておく必要がある。
まずは円安のリスクヘッジ
円が安くなった時には代替通貨が買われているはずだ。円もドルもユーロも一斉に安くなることは考えにくい。従って「外貨預金」が適当であるとのこと。
ただし、為替手数料が安いネット銀行を使うべき、FXもレバレッジ管理すれば(1倍にしておく)利用できる。
ただし、金利上昇時(国債下落時)に円高になることがあるということが経験的に分かってきたので慌てないことだという。
続いてインフレのリスクヘッジ
「物価連動国債」という商品があるとのこと。
消費者物価の上下に応じて金利が変動する金融商品である。ということはインフレになると有利になる。
ただし、現実的には長くデフレが続いたため元本割れが続出し、発行停止中とのこと。
国債下落へのリスクヘッジとしては
「国債ベアファンド」があるそうな。
国債の下落に4~5倍のレバレッジをかけて投資するそうで、日本破滅にかけた金融商品である。
こちらもデフレが続くと大きく下落するので使い方は難しいが、本当に破綻が現実のものになった時に、個人でも対応できるという意味で、たいへん興味深い商品だという。
「まずそういうことはないでしょうが、キプロスでは起きたことなので…」という前置きで説明してくれたのが「預金封鎖対策」である。
この時には、信用力の高い海外の金融機関に預金を移すしかないが、万が一に備えるのなら「ACWI(世界株ETF)」という商品で世界の通貨に分散投資することもできるようになったという。
もっといえば、最強の「国家破産」対策商品としては
「ドル建て日本国債ベアETF」という商品もニューヨーク市場に上場されたという。
日本国債下落と円安の両方で利益が出るというもので、ウォール街の考えていることは空恐ろしい。
橘さんに話を聞くと、「こんな金融商品まであるのか」と驚愕してしまう。日本破綻の可能性を冷徹に見据えて、ガッポリと儲ける方法を考えている人間が、世界にはいるということだ。
その事実を前にして立ちすくむのではなく、国に頼るのでもなく、弱者は弱者なりのやり方(マクシミン戦略)で資産防衛をするしたたかさを持たねばならない。
橘さんが言いたいのは、そういうことであろう。
どこかのCMではないけれど、お金は大事である。よく考えなければならない。

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