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夕学レポート

2014年05月28日

里山資本主義 藻谷浩介さん

photo_instructor_712.jpg藻谷浩介氏は、政府系金融機関在職時代(日本政策投資銀行)に、平成大合併前の3,200市町村の全てを自費で巡歴したという。しかも2度、3度廻った地域も多かったと聞いていた。
藻谷氏に率直に聞いてみた。
「なにがそこまでのモチベーションになったのですか?」
答えは、この講演のスタンスにも通じるものがあった。
事実を確かめたかった。
「○○○○と云われている」=情報や理論ではなく
「□□□□であって欲しい」=信念やイデオロギーでもなく
自分の目と足で確かめる。
そうすると目から鱗が落ちるような思わぬ事実に出くわすことがある。
それがとにかく面白かった。
藻谷氏が講演で使った資料の言葉を借用すれば
1.統計と実例から帰納し、確実に事実と言えることを押さえる
2.統計と実例から帰納し、確実に間違いと言えることを押さえる
3.どちらとも言えない領域について、仮説を元に仮判断を下し、後日検証する
そのために、訪れた市町村の、地形・交通・産業・人口動態・通勤通学動態・郷土史等を詳細に把握した。
これが藻谷氏の首尾一貫した調査スタイルである。
新書大賞2014に輝いたベストセラーで、今回の講演テーマでもある「里山資本主義」という考え方も、同じ姿勢で形成されたものだ。
中国山地の里山で、実際に行われ、立派な成果を出している実例で、なおかつ、工夫さえすれば他の地域でも展開可能な地域のあり方を提示したものだ。
例えば、岡山県真庭市では、集成材工場の副産物(産業廃棄物)である木屑をペレットに成型し、専用ボイラーで燃やすことで、極めて高効率の発電を実現している。ペレットは灯油の半額、電力の1割が木で賄うことができている。
例えば、広島県庄原市には、石油缶を再生利用した手作りのエコストーブを作り、少量の木切れを完全燃焼させて、おいしく煮炊き+暖房を実践している人がいる。しかも「過疎を逆手に取る会」と名付けた仲間を募り、暮らしの中での創意工夫を楽しんでいる。
「里山資本主義」についてはこちらを参照
http://www.nhk.or.jp/eco-channel/jp/satoyama/interview/motani01.html


「里山資本主義」は、端的にいえば、「自給+物々交換+お金の地域内循環」の仕組みを回すことによって、いざという時に頼れる保険経済システムを作っておこう、という考え方である。
それは、かつて日本の里山で普通に行われていた暮らしに、新たなテクノロジーや流通システムを巧みに組み込んでいくことでもある。
日本の国際収支の長期トレンドをみれば赤字化は間違いなく進む。しかもアベノミクスによる円安でエネルギー輸入額は急増し、赤字化に拍車を掛けている。
だったら、わずかでもいいから里山のペレットを使ってみたらという提案である。
オーストリアはわずか10年の間に林業大国に変貌した。
森林資源の70%を利用し、木は集成材に加工し、低層・中層の木造建築が当たり前になっている。その結果、年間に1兆円弱の木材資源を輸出し、外貨を稼ぐ。林業は収入の高い職業として若者に人気だという。
地理的にいえば、日本は世界でも有数の林業適地なのだから。
生産労働人口が減少し、エネルギー価格の高騰が避けられない以上、ハイテク工業に傾斜した現在の産業構造に永続性はない。
だったら、スイスやフランス、イギリスにならって地元の農水産品に根ざしたブランド品や集客交流を考えたらどうか。フランスの3ツ星レストランの9割は田舎にあるという。
日本の各地に散在する、地元の食材を使った郷土料理を使わない手はない。
理論や信念にとらわれている人の、「里山資本主義」に対する反応は決まっている、という。
小さいレアーケースでしかなく新たな資本主義とは呼べない。
里山で1億人の人間が里山で食えるはずがない。
しかし、藻谷氏の「里山資本主義」は従来型の資本主義(マネー資本主義)の」代替システムではない。その欠陥を補うことが出来るサブシステム、という位置づけである。
自給+物々交換経済と聞くと、江戸の田園暮らしの戻るのかという錯覚をしがちだが、そうではない。貨幣経済の補完機能として、自給+物々交換経済を持っておくということだ。欧州などの先例を見ると、実はそれが最も先進的な経済システムである。
最後に、都市居住者に出来ることは何か、と題してまとめてくれた実践例を紹介しておく。
最も簡単なこと
エコストーブを入手し、水源を確保する (井戸など)
自営の店で買い物し、経営者と仲良くなっておく
特定の田舎に通って産品を買い、絆を作っておく
もう少し進めば
庭などで作物を育て、自家消費/物々交換する
特定の田舎に田畑/セカンドハウスをつくる
最後には
好みの田舎に移住する/季節ごとに転々とする

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