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夕学レポート

2014年07月15日

面白い絵、面白いお話、もっと面白くなりました 画家 山口晃さん

akira_yamaguchi.jpg 「私見、日本の古い絵」と題して、画家の山口晃さんにご講演いただきました。
日本の美術が、西洋の真似をしはじめ、西洋に追いつこうとする、前。日本にはヘンな絵がありました。日本の古い絵はヘンだぞ、面白いものがあるぞ、誇れるすばらしいものがあったんだぞ。それが、山口さんの私論でした。面白いお話でした。そして、美術がもっともっと面白くなる、山口さんの作品を見るのももっと面白くなっていく、そんなお話でした。
山口さんの著書ヘンな日本美術史』(祥伝社)は、2013年の小林秀雄賞を授賞されたことでも、話題となりました。
小林秀雄賞は、日本語表現の豊かな著書(評論・エッセー)に贈られる、文芸評論家 小林秀雄の生誕100年を記念して創設された学術賞。山口さんは初めて、画家として、授賞されました。授賞理由は、「読んでおもしろい」からだったそうで、やはり面白いということなんだなあ、と思います。山口さんご自身が面白いものがあるお、ヘンなものがあるぞ、と面白がっていらっしゃるのが、お話からも伝わってきてまたそれが聞いている側が面白くなっていく、そんな面白さの対話とでもいいましょうか、があるんだなと思いました。
お話は「鳥獣人物戯画」から始まり、雪舟、そしてさいご、川村清雄まで、たっぷりとお話いただきました。
「ヘンとは何ですか」「ハイすみません」
講演さいしょのスライドは、そう雪舟に怒られている山口さん筆の水墨画。それだけに雪舟はヘンだぞ、面白いぞという思いを予感しましたが、期待どおり、期待以上で「雪舟は面白いんだなあ」と実にわくわくしました。
「雪舟は、ひとつの原点であり、頂点です。」と山口さん。


画聖 雪舟は、中国の水墨画の芸術を咀嚼し、日本独特の空間を生み出した人です。
その空間とは二次元。平面性のもつ、ぱんと跳ね返ってくるよう強さ、奥行きをもたない分の強さがある、と山口さんは解説されます。近くで見ると薄くとも、遠くに離れるととたんに奥行きをもち、「相反する性質を内包したモチーフどうし」を表現していると著書で山口さんはおっしゃっていますが、それだけの技術と感性があったということかもしれません。
山口さんはひとつ、面白いエピソードを紹介してくださいました。
小学校の授業で、クラス中で人物像を描いたとき。ひとりが、影をつけて描きました。それを先生が指摘し、クラス中の生徒たちが見ると、たしかに影がある。いちど気づくと見える、できる、けれどいちど気づいてしまうと見えなかった、知らなかったころには戻れず、見えてしまう影を意識せざるえない。
気づくと、誰でもできるが、気づいてしまったら、戻れない。雪舟の極めた二次元性からそんな指摘もありました。
雪舟。面白い画家でした。「四季山水図」「破墨山水図」「恵可断臂図」解説しきれませんのでぜひ、前述のヘンな日本美術史』ご参照ください。
さいごに。この絵の上で何がおこっているのか。画題と同じくらい、見ると面白いですよ。とこれはアドバイスでもありました。画材のもつ質感、色の透明感、大きさ、絵のなかの空間、実際に見てみると、絵の上で起こっていることが実感できて、面白い、そうです。茨城県水戸市にある水戸芸術館で、来春、山口晃さんの個展が予定されています。山口さんのヘンな面白い絵を、山口さんの絵の上で起こっていることを楽しみに、ぜひ、お出かけください。(湯川真理)
山口晃展 2015年2月21日(土)~5月10日(日) 水戸芸術館

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