KEIO MCC

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夕学レポート

2015年12月22日

幸せの日本が世界を救う|前野隆司先生

photo_instructor_789.jpg慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科 教授の前野隆司先生の「幸せの日本論」を拝聴した。前野先生は世界共通で現代にはびこる競争社会のストレスに対して、個人がどのようなマインドを持つことで幸福感が増えるのか、また社会でその幸せを増幅させるには日本的価値観を持つことが非常に役立つことを丁寧に解説してくれた。
前野先生いわく、個人の幸せには以下の4つの因子が関連しているとのこと。

  1. 自己実現と成長を達成することに夢中になっていること
  2. 社会を構成する自分以外の人とつながり、彼らに感謝するマインドを持つこと
  3. 前向きで楽観的なマインドを持つこと
  4. 個人が自律的に行動でき、自分のペースを保つことができること

確かに、これらの4つの因子が満たされると満足感が沸いてきて、誰もが幸せに感じるだろう。4つの因子を考えているだけでも少しハッピーな気持ちになってきた。さらに、前野先生の説明によれば、日本社会の根本に根付く無我、無常、無私(利他的であること)の風土はこれらの4つの因子が生まれやすい下地として機能しているという。ここからは私の解釈も含まれているが、心のすべてを手放したとき(無)だからこそ、自分が自己実現に向け、さまざまな人とのつながりに感謝し、前向きに、自分のペースで歩みを進められるのだと思う。無我夢中の状態が前野先生の幸せに近いような気がする。
また、前野先生は、この4つの因子を満たすには日本社会の「和」も重要になると説いた。自分がせっかく良い気持ちになっているところに足を引っ張る周囲の輩は、「和」の心に基づく社会思想には登場しないということだろう。ヨガの思想が前野先生の考えによく似ているとも思った。ヨガでは瞑想状態(無)とストレッチの組み合わせにより、血の巡りがよくなり同時に頭がすっきりする効果がある。私も一時期はまったけれど、ヨガのあとは今の自分の人生が幸せの4因子を満たしているように感じて、気持ちがよい。
つまり、日本社会に生まれた、もしくは生活した人は、その土地柄に起因して自然と幸せになれる。世界に196も国がある中で、島国日本が古代の昔から育んできた文化があるお陰で、人は幸せになれる。これはラッキーだ。日本に産まれてよかったなぁ。
ほんの少し話はずれるのだが、2011年3月に留学していた私は、この「和」(英語に訳すとHarmony)を必死にアメリカ人クラスメートに説明しようと試みた。そして、自身の英語力はさておき全く理解してもらえなかった覚えがある。
「自分のお腹がどんなに空いていても、より弱きものを優先できる国民性の正体はharmonyなんだよ。日本人は、他人と調和し一つになれる『和』の心を持っているからこそ、他者を尊重することができたんだよ。」
「・・・・」(怪訝な顔で見つめ返される)
巨大な津波が海岸線の町並みを飲み込んだ直後にもかかわらず、救援物資を前に整列し、他者への慈愛を忘れなかった日本人の姿勢は海外からも賞賛された。しかし、この姿勢の背景にある「和」や「無私」の精神だけはアメリカ人学生に受け入れられなかった。日本社会にいる自分と他者を一つの「和」の中に位置づけたり、自分を無くして他人に尽くすという概念が、個性の「個」を重んじるアメリカ人には一種の全体主義のように写ったかなぁ。
人種・セクシュアリティー・宗教上のマイノリティーの権利を擁護するのはリベラル(文化的に左派)なこととして保守派からすると他人に対する寛容度が高い。私が説得を試みたクラスメートもリベラルな学生ばかりであった。しかし、そんなリベラル派すら、常にマジョリティーとは異なるコミュニティーに「個」としての自分を位置づけている。マジョリティーは自分とは異なるけれど理解し、共存はするという考え方をもっているように思う。日本の「和」の概念と「個」の議論はどこまでいっても平行線なのであった。
みんなが幸せになるポテンシャルを持った日本社会の仕組みは、広くお勧めしたいと思う。前野先生もきっとそう思っている(と思う)。私は運よく前野先生のお話を拝聴したが、国内でこの幸福論の認知度が上がればよい。幸せは日本社会に潜在的にあるものだから、あとはみんなが自分の幸せに気づけばよいだけではないだろうか。
一方、上記でも述べたように海外に日本社会のあり方を浸透させていくことは一筋縄ではいかないだろう。説明して理解してもらうだけでも難しかったのだから。もっとも、この「和」の考え方を積極的に宣伝したり、お勧めしたりすること自体「無我」や「和」の精神から離れるものになるのかもしれない。日本社会に根付く幸せのあり方を海外でも認知してもらうには、アウトバウンドに出て行くのではなく、インバウンドを優しく包み込むイメージがよいのではないだろうか。毎年の海外観光客数は増加傾向にあり、2020年オリンピックでは大勢の観客が日本を訪れるはずである。前野先生の言葉を借りれば、日本社会は中心に「無」があることによりどんなことも「和」の中に取り込むことができる。是非、日本を訪れた外国人には、この「無」とか「和」の精神を吸収していただきたい。4つの幸せの因子を心に刻めば、たちまちあなたも「おもてなし」のプロフェッショナルになれる。

沙織

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