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井庭 崇『コロナの時代の暮らしのヒント』

2020年12月08日

井庭 崇
慶應義塾大学総合政策学部教授

今、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響で、社会全体に、そして一人ひとりの暮らしに大きな影響が出ています。世界の誰もが、体験したことのない大変な状況にいきなり投げ込まれ、先行きも見えないなかで、ストレスや不安を抱えながら暮らしています。仕事や学びのやり方は変更を余儀なくされ、家のなかで過ごす時間が圧倒的に増えています。
それでも、なんとかうまくやって、この難局を乗り越えていくしかありません。各自が創意工夫し試行錯誤しながら、自分たちのよりよい暮らし・働き方・学び方をつくっていくしかないのです。
このような状況のなか、僕は一人の研究者として、また教育者として、自分に何ができるかを考えました。

考えるなかで、僕がこれまでに研究で見出してきたもの・学んだこと・得た成果が多くの方々の役に立つかもしれない、と思い始めました。というのは、僕は、一人ひとりが持っている「日常的な創造性」を日々の暮らしや仕事のなかで発揮することを支援する研究をしているからです。
その支援の方法として、いろいろな分野で、仕事や教育、暮らしをうまく実践するコツ・秘訣をつかみ、それをわかりやすい言葉にして共有するということをしています。専門用語では「パターン・ランゲージ」と呼ばれる方法です。

うまく実践している人たちの考え方ややり方の「型」(パターン)を言語(ランゲージ)化する―コツ・秘訣を表す言葉をつくる―というものです。そのようなコツ・秘訣を表す言葉があると、各自が自分で考えやすくなったり、ほかの人にわかりやすく伝えたりできるようになるのです。このような研究をしていると、物事に取り組むコツ・秘訣には、その分野で活かせるだけでなく、ほかの多くの分野・物事にも通じる本質的な知恵が含まれていると感じます。そして、それらのなかには今の大変な状況での暮らしにも役立つ知恵が多く含まれている、と気づいたのです。それらの知恵をわかりやすくまとめて紹介しよう―こうして『コロナの時代の暮らしのヒント』が生まれました。

本書では、いろいろな分野の研究で見出されてきた知恵を、今の状況に役立てやすいように紹介していきます。たとえば、「認知症とともによりよく生きる」ためのコツ・秘訣は、今の状況に合わせて読み替えれば、今のような「不自由なこともあるけれど、そのなかでも、日々の生活をよりよく生きる」ためのコツ・秘訣として、役立てることができます。
また、「学校の先生の教え方」のコツ・秘訣が、「家庭での子育てや学習支援」に役立ったり、「ビジネスにおける企画」のコツ・秘訣が、「週末の家族での過ごし方を考える」のに役立ったりします。このような読み替えと応用が可能なのは、偶然ではありません。
僕たちがコツ・秘訣をまとめるときに、少し抽象化して本質を捉え、物事の考え方や取り組み方として普遍性のある知恵として抽出しているからなのです。そのようなわけで、本書は、いろいろな分野で見出されたコツ・秘訣を集めた「コラージュ」(いろいろな素材を組みあわせた表現)になっています。

さらに、それぞれのコツ・秘訣を紹介するカードのイラストのキャラクターやテイストが異なっていることに本書を読んでいくと気づくはずです。それは、いろいろな研究成果の作品からコラージュ的につくられているからです。
いろいろな分野で得られた知恵から、今の状況を少しでも幸せに生き抜くためのヒントを、皆さんに得ていただけたら、皆さんが役立てていただけたら、そう願っています。

本書で紹介する今の大変な状況のなかでの暮らしをよりよくしていくヒントは、どれも、シンプルで簡単なものばかりです。お子さんがいる家庭にも、一人暮らしの方にも役立つものたちです。

どんなヒントなのか、イメージいただけると思いますので目次をご紹介します。
全部で三二個のヒントが収録されています。どれから読んでも構いません。もちろん、前から順に読んでいただいてもよいですし、目次を見たり、パラパラめくって眺めたりして、気になるものから読んでもよいのです。

読んで、「いいな」と思うものがあったら、実際に自分でもやってみてください。そして、周囲の人にも教えてあげてください。みんな、同じように大変な日々を過ごしています。

だからこそ、みんなでこの難局をうまく乗り越えていきましょう。みなさんが本書を手にするころ、どのような社会状況になっているのかは、これを書いている時点ではわかりません。できれば、リスク・心配のない状況になっていればベストですが、おそらくは―残念ながら―多かれ少なかれ不自由な生活がまだ続いているのではないかと思います。どのようなレベルの社会状況であれ、本書が、少しでもみなさんの暮らしをよりよくするための参考になれば幸いです(なお、本書の内容は、コロナ収束後でもずっと活かしていくことができるものになっています)。「そんな時期があったねぇ」とみんなで思い返すことができる日が、少しでも早く来ることを祈りながら。

【コロナの時代の暮らしのヒント】
1. いつもと違う日々を《新しい旅》だと捉え、素敵で思い出深い日々にしていく
2. 《ポジティブな割り切り》で、ストレスを溜め込まない
3. 《備蓄の普段使い》で、賞味期限内のものに置き換えていく
4. 《ゆるやかなつながり》も大切にする
5. 《学びの主人公》である子どもをサポートする名脇役になる
6. 情報を得たら《でどころチェック》を心がけ、しっかり《自分で考える》ようにする
7. 自宅に、世界で一番ワクワクする《自分の本棚》をつくる
8. 家族が《まねぶことから》始められるように教える
9. 《わくわく実行委員会》を立ち上げて、楽しい企画を実行しちゃおう!
10. 《わが家専門家》として、必要な情報を取捨選択し、《自分たちのスタイル》をつくっていく
11. いろんな野菜を《家で育てる》ことで、身近な自然を味わう暮らしをつくる

12. 物事は《なるべくシンプル》にし、《子どもと一緒に》取り組んだり、《先回りの準備》をしたりして、時間と心に《余裕をつくる》
13. どの未来が来ても大丈夫なように、《未来を織り込む》

14. 《感謝のことば》を伝えて、家族に《ことばのギフト》を贈る
15. いつか思い出になるような、そんなかけがえのない《おもいで時間》を味わい、写真に残しておく
16. できなくなったことではなく、《できることリスト》を書いてみて、前向きに暮らす
17. 不可解な言動は、その人が《体験している世界》を《内側から捉える》ことで理解する
18. すべてを自分で抱え込むのではなく、家族の《活躍の機会》や《成長の機会》になると考え、任せてみる
19. 《好きなことを増やす》絶好のチャンスだと捉え、自分の「世界」を広げる
20. まず親が《自分なりのおもしろポイント》で面白がることで、子どもの《面白がり力》を育んでいく

21. 家族のミスや失敗には《ひと呼吸おく》ことと、《がんばりへリスペクト》に気持ちで接することを大切にする
22. 残念なリーダーだとしても、《ダメ事例の研究》によって自分の学びにしてしまおう
23. 万が一のことを考え、自分の《活動の足あと》を仲間・家族と共有して、《チームごと》にしておく
24. 《相手の気持ち》になって《言われてみれば欲しかったもの》を発想し、《もうひと手間》かけて《愛着が生まれる余地》のある企画にする
25. 《自分の仕事から》何ができるか、《貢献の領域》がどこにあるのかを考えて行動に移す
26. 《ひとつの実験》として、自らの《生き方の創造》をし、《伝説をつくる》くらいの気持ちでいると、試み・挑戦が面白くなる
27. ぼーっとしたり好きなことをしたりする《自分の時間》は、元気をチャージする《充電タイム》として、きちんと取るようにする
28. ときには弱い自分も認めて《弱さの共有》をすると、それを一緒に乗り越えた《未来への仲間》をつくることになる
29. 自分のスケジュールに《本との先約》を入れておくだけで、読書時間を確保できるようになる
30. すべてがオンラインに乗っているからこそ、絶好の《学びのチャンス》だと捉え、飛び込んでみる

31. 写真や絵を見て感じたことを語りあい、自分の《こだわりのポイント》を探りながら、自宅で《感性を磨く》
32. 最終的には、「そんな時期もあったね」と、みんなの《楽しい記憶》になるように

 

コロナの時代の暮らしのヒント』の「はじめに」と「目次」を、著者の許可を得て編集・掲載しました。無断転載を禁じます。

コロナの時代の暮らしのヒント
著:井庭 崇 ; 出版社:晶文社 ; 発売年月:2020年9月; 本体価格:1,600円(税抜)
井庭 崇(いば・たかし)

  • 慶應義塾大学総合政策学部教授
1974年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部教授。博士(政策・メディア)。慶應義塾大学クリエイティブ・ラーニング・ラボ代表、株式会社クリエイティブシフト代表、パターン・ランゲージの国際学術機関The Hillside Group理事、および、一般社団法人みつかる+わかる理事。専門は、創造実践学、パターン・ランゲージ。情報社会の次の社会ビジョンとして「創造社会」を掲げ、1人ひとりが日常的な創造性を発揮しながら「ナチュラルにクリエイティブに生きる」ことを支援する実践研究に取り組んでいる。
著書に、『クリエイティブ・ラーニング:創造社会の学びと教育』、『パターン・ランゲージ:創造的な未来をつくるための言語』、『社会システム理論:不透明な社会を捉える知の技法』、『プレゼンテーション・パターン』(慶應義塾大学出版会)、『対話のことば』、『旅のことば:認知症とともによりよく生きるためのヒント』、『園づくりのことば』(丸善出版)、『プロジェクト・デザイン・パターン』(翔泳社)、『複雑系入門』(NTT出版)等。NHK Eテレ「スーパープレゼンテーション」では初期にレギュラー解説者を担当。

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