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薬学の未来を先導する―慶應義塾大学薬学部・大学院薬学研究科開設

2007年12月10日

慶應義塾法人合併推進本部

学校法人慶應義塾は学校法人共立薬科大学との法人合併の準備を進めてきましたが、2007年9月28日,文部科学大臣から認可を受けました。これにより,2008年4月1日,学校法人慶應義塾は学校法人共立薬科大学と合併し,同時に慶應義塾大学薬学部・大学院薬学研究科が開設されます。

1. 設置の背景

薬学の分野は,国内外を問わず長い歴史を持ち,人間と社会を支える大切な分野として,大きな役割を果たしてきました。国内外を含めて未来の社会においては,その重要性はますます高まるものと考えられます。現在すでに,薬を扱う人々の知識と教養の広範化・多様化・高度化,薬学研究の広範化・多様化・高度化,国内外を問わず広がる安全・安心・健康社会への関心の高まり等によって,薬学の分野における全人教育,研究レベルの向上,社会貢献の必要性が急速に増しています。
実際,生命・健康と医薬品・食品・水等との関わり,環境汚染物質・遺伝子組み換え・感染症対策その他,環境・医療・科学技術・政治・経済等にかかわる国際的諸問題,生態系の複雑化・多様化と環境への影響,発展途上国等における薬学的健康管理の普及,地域社会における薬剤師の役割の広範化・ 高度化等々,薬学の教育,研究,社会貢献がますます重要になっていくと考えられる具体例や課題を,数多く挙げることができます。
慶應義塾は,創立以来およそ150 年もの長きにわたり,教育・研究・医療・社会貢献において,これまで社会を先導してきた近代総合学塾です。特に生命・健康の領域に関しては,医学所の開設(1873年)以来,医学部,大学院医学研究科,大学病院,看護医療学部,大学院健康マネジメント研究科,先端生命科学研究所,理工学部生命情報学科をはじめ,ほとんどすべてのキャンパス,学部,大学院研究科等において,生命と健康に関する教育,研究,社会貢献が長きにわたって行われています。そして,多くの先人の尽力により,世に誇るべき多大な成果が蓄積され,国際的な教育・研究・医療・社会貢献のネットワークが構築されてきました。
2008年4月,慶應義塾は共立薬科大学と合併し,慶應義塾大学薬学部・大学院薬学研究科を開設します。共立薬科大学の教育理念・目的を尊重し,これまでに培われてきた薬学の分野における専門的な教育・研究・社会貢献と慶應義塾の総合力を融合させることにより,以下の事項を踏まえて新しい薬学教育,薬学研究,そして薬学を通した社会貢献の在り方を世に示して社会を先導していきます。

  1. 大学学部,大学大学院,大学病院,一貫教育校等,伝統と実績のある慶應義塾の総合的な教育環境の中に薬学教育を組み入れることにより,国際的かつ全人的な薬学教育を先導する。
  2. 慶應義塾大学の既存の他学部・大学院研究科,研究所等のほか,他の諸研究機関との連携を通した研究レベルの向上による,創薬から政策に至るまで,薬学にかかわる広範かつ高度な研究の発展が見込まれ,薬学分野の新しい学問的貢献を先導する。
  3. 医薬品・食品・医療・環境等にかかわる諸問題の発見と解決を通して,国際社会,国内の各地域等に対して,安全・安心・健康等にかかわる領域における新たな社会貢献を先導する。

2. 教育・研究の理念

近年の医療関連科学技術の進歩と医薬分業の進展,少子高齢化社会の到来,画期的新薬開発の要請など,医薬品を取り巻く社会的問題が顕在化し,薬学,薬剤師を取り巻く環境が大きく変化しています。2006年には,薬の専門家として臨床現場などで貢献する薬剤師の資質向上を目的に「薬学教育6年制」がスタートしました。この背景には,社会が求める知識・技術を持った薬剤師,医師や看護師と協力してチーム医療の現場で活躍できる学際的知識を持った高度な専門職としての薬剤師の養成に対する社会からの強い要請があります。また,これに伴い新薬開発のみならず,環境・生命科学など多様で広範な薬学分野で活躍する人材に対する社会的要請から「4年制薬学部」もスタートしました。
安全・安心への社会の関心の高まりや薬剤師概念の変化による薬学教育の更なる高度化により,薬に携わる人々への全人教育・教養教育・倫理教育,そして薬に関する政策立案及び実践において社会をリードする多様な人材の養成が求められています。その実現のためには,広く教養教育を受けることができ,かつ多様な教育機会と人的交流に恵まれる場と,長期にわたる高度な病院実習,ならびに最先端の薬学研究を可能にする環境が不可欠であります。
慶應義塾は,薬科大学として77年にわたり教育研究を行い,優れた成果を挙げてきた共立薬科大学と合併し,現有する9学部と有機的連携を図りつつ,薬学人としての知的,道徳的及び応用的能力を展開させることを目的として薬学部を設置します。そこでは,薬に携わる人への全人教育・教養教育・協力教育を行うことによって,未来の国際社会における総合的な健康生活コンサルタント分野を創造し,従来の薬剤師にとどまることなく,健康生活コンサルタント養成への道を先導します。また,企業等における薬剤,食品,環境分野等の高度な研究開発に携わる人材,薬学の知識をもって経済界を先導する多様な人材,そして国内外を問わず薬に関する政策立案及び実践を先導する多様な人材を養成します。さらに,近年の薬学教育・研究に課せられた上記の課題に取り組み,薬学を通じて広く社会に貢献することを目的とします。

3. 養成する人材像

薬学科(6年制)
高度化する医療,薬物療法,さらには医薬分業の進展に伴う医薬品の適正使用や薬害の防止といった社会的要請に対応できる,医薬品を「モノ」としてとらえるのではなく「ヒト」を対象とする薬物治療に関連する知識を高め「科学の基盤をもった,ひとに優しい薬剤師」の養成を行います。全ての卒業生が薬剤師の資格を持ち,卒業後には病院薬剤師,保険調剤薬局薬剤師をはじめ,薬事行政公務員,さらには医薬関連の研究・開発職,医療系大学教員などに進みます。医師や看護師と共にチーム医療に携わる薬剤師は,専門性の他にコミュニケーション能力,問題解決能力及び高い倫理観が要求されているため,現在そのような人材の育成が社会から強く求められています。また,薬剤師の概念が変化しつつある中で,薬に携わる人々への全人教育・教養教育・協力教育を行うことによって,「健康生活コンサルタント」としての薬剤師を養成します。
薬科学科(4年制)
従来の薬学出身者が創薬・環境・生命科学など多方面で,研究をはじめとする様々な分野で活躍していることは,薬学的知識が薬剤師以外の領域でも必要とされていると言えます。そして,これらの分野ではめざましい科学技術の進展,医療従事者への医薬品情報提供の重要性,環境・衛生問題の多様化と顕在化など,対応すべき大きな変化が起きています。さらに,我が国の知的集約産業である創薬産業の国際競争力の強化も必要とされています。薬科学科においては,上記の社会的要請に応えるため,薬学の基本である生命科学の教育を中心とし,「創薬・環境・生命科学など幅広い薬学分野の教育研究を通して,国民の健康をサポートする人材」を養成します。学部卒業後は多くの学生が大学院に進学することを想定していますが,その後,製薬・化学・バイオ産業の研究者や技術者,国家・地方公務員,公的研究機関研究員,科学系大学教員,また,医薬情報担当者(MR),治験コーディネーターなどを養成します。

4. 学部、学科、学位の名称

学部名
慶應義塾大学薬学部  Keio University Faculty of Pharmacy
学科名
薬学科(修業年限6年) Department of Pharmacy
薬科学科(修業年限4年) Department of Pharmaceutical Sciences
学位の名称
薬学科卒業生は学士(薬学),薬科学科卒業生は学士(薬科学)とします。
学士(薬学) Bachelor of Pharmacy
学士(薬科学) Bachelor of Pharmaceutical Sciences

5. カリキュラム

薬学部の趣旨・目的を達成するための薬学科・薬科学科共通の教育課程の編成について

  1. 医療人として幅の広い人間性の醸成と全人教育・教養教育を重点的に行う目的から,総合大学であるメリットを生かし,1年次のカリキュラムを主として日吉キャンパスで行います。全学的に行われている人文 ,社会,自然科学系の科目の履修を推奨し,薬学だけに留まらない幅広い教養知識の習得が可能となるように配慮します。具体的には,「人と文化」という科目を設置することにより,日吉キャンパスの他学部の設置科目を薬学部学生が自由に選択・履修できるよう工夫しています。
  2. 薬剤師養成を主な目的とする薬学科においても,将来の医療技術の進展に対応できるよう科学の基盤が必要です。また,薬科学科においては他の理系学部との差別化から薬学的知識を重視します。これらの観点から,「薬学部モデル・コアカリキュラム」を重視し「薬学専門科目」の主要部分は両学科必修とします。
  3. 両学科ともに将来自分の進むべき道をシミュレートできるような早期体験学習を充実させます。
  4. 国際化に備えて語学教育を重視し,ほぼ全学年に英語の講義などを設けます。また,専門科目と関連した科学英語や医療英語の導入も積極的に行います。

薬学科の教育課程編成の考え方及び特色
薬学科の目的である「科学の基盤をもった,ひとに優しい薬剤師を養成する」を達成するために,以下のように教育課程を編成します。
1年次からヒューマニズム教育を徹底し,「生命倫理」を課題にしたスモールグループ学習を行い,生命の尊厳を認識するとともにコミュニケーション・プレゼンテーション能力も養成します。さらに,医療の担い手にふさわしい態度教育の一環として,病院・薬局の見学を入学後の早い時期に行いますが,これは学習に対するモチベーションを高めることにもつながります。化学,物理,生物に重点をおいて基礎教育の補完を徹底し,専門科目へつなげます。
主に2~3年次では,薬剤師において重要な科学の基盤として有機化学,生化学,物理化学などを講義と実習の両面から習得させます。
4年次前期では薬の適正使用を目的とした薬物治療関連講義や,社会と薬学とのつながりに関する講義などを重視します。4年次後期には医療薬学実習室を活用した事前実習を行います。
さらに,5年次に実務実習を行いますが,その直前に統合型医療薬学の講義を行い,充実した病院・薬局での実務実習に備えます。実務実習については,信濃町キャンパスの慶應義塾大学病院を中心として関連病院においても実施する予定です。
6年次には問題解決能力を養成することを主目的として課題研究(卒業研究)を行います。さらに,高度なアドバンスト病院実習制度を設け,高度医療への対応もはかります。
薬科学科の教育課程編成の考え方及び特色
教育目標である「創薬・環境・生命科学など幅広い薬学関連分野の研究教育を通して,国民の健康をサポートする人材を育成する」を達成するために,以下のように教育課程を編成します。
1年次には,早期体験学習を通して幅広い進路を体感するとともに,視野を広め専門科目の基礎を学びます。薬科学科卒業生の進路である薬学の知識を生かせる分野の見学と,そこで活躍している薬学出身者からのアドバイスを得て,最初の学年で自己の将来像をシミュレートすることを可能とします。さらに早期体験学習の一つとして,大学内の各講座で実際に行っている研究を体験させます。これとともに,4年間の学習内容がどのように自分の将来と関連しているかを学ばせることで,勉学に対するモチベーションの向上を図ります。
2年次及び3年次では専門教育やアドバンスト実習などにより,研究などへの第一歩を踏み出させます。専門教育では体,病気,さらに医薬品を科学の視点から考える基盤を養います。アドバンスト実習は本格的な研究への入口であり,科学的な思考法とプレゼンテーション能力を身に付けさせます。また,3年次には企業インターンシップも行います。
4年次には各学生の進路に合わせて,卒業研究と講義のどちらも適宜履修することが可能なカリキュラム編成とします。研究を選択した学生は,ほぼ1年間の卒業研究を行います。医薬情報担当者などの道に進む学生には,それに必要な選択講義を中心に学ばせます。担当教員と相談の上で,各個人の進路に合わせた卒業研究(必修)と講義の履修計画を組み立てさせます。成績優秀者は大学院前期博士課程への早期進学(3年終了後)を認めます。

6. 大学院について

(1)教育・研究の理念
慶應義塾大学大学院は,義塾建学の精神に則り,学理及びその応用を教授研究し,学術の深奥を究めて文化の向上に寄与することを目的としています。研究の目的はそれぞれの研究科毎に決まっていますが,薬学研究科にあっては,「創薬などの分野において,自立して研究を遂行できる薬学研究者及び高度医療の知識と臨床応用を修得し,かつ問題解決能力を備え,薬物治療に貢献できる臨床薬剤師を養成する」ことを目的とします。
本研究科はいわゆる区分制の博士課程であり,修士課程においては学部段階における教育研究をベースに,「広い視野に立って精深な学識を授け,薬学研究者としての研究能力又は高度の専門性が求められる薬剤師としての卓越した能力を培うこと」を目的としています。また,博士課程においては,修士課程段階における教育研究をベースに,「研究者として自立して研究活動を行い,または医療に従事するために必要な高度の研究能力及びその基礎となる豊かな学識を養うこと」を目的とします。
(2)養成する人材像
薬学専攻にあっては,主として薬学研究者の養成を目指します。創薬,環境,生命科学等幅広い分野での薬学の教育研究を通して,国民の健康増進に寄与するとともに,創薬産業において国際的にも優れた人材の養成を目指します。
また,医療薬学専攻は,高度化,複雑化,専門化する医療現場において,医療チームの一員として医師や看護師等医療従事者と協力して,患者の病気治癒のため寄与できる,いわゆる臨床薬剤師の養成を目指します。特に医療薬学専攻(博士課程)には専門薬剤師養成コースを設け,がん,糖尿病など特に薬物が治療に大きな影響を及ぼす分野における専門薬剤師の養成に努めます。
(3)研究科,専攻,学位の名称
研究科名
大学院薬学研究科  Graduate School of Pharmaceutical Sciences
専攻名
薬学専攻  Major in Pharmaceutical Sciences
医療薬学専攻 Major in Clinical Pharmacy
学位
修士(薬学)  Master of Pharmaceutical Sciences
修士(医療薬学)  Master of Clinical Pharmacy
博士(薬学)  Ph.D in Pharmaceutical Sciences
博士(医療薬学) Ph.D in Clinical Pharmacy
(4)カリキュラム
本研究科は修士課程2年及び博士課程3年の5年間の標準修業年限を通して教育研究指導を行う博士課程であり,上述の目的を実現するために教育研究指導の体制が体系的に整備されています。また,本研究科は講座を中心とした教育研究指導体制を行っています。22ある講座のうち19講座が基礎となっており,各講座が主体となって教育研究指導を行いますが,専門が特定の講座のみに偏らないよういろいろな講座の授業を聞くなど,複数の講座の授業を聴講できるようにします。研究能力養成に必要な専門性の高い自然科学系の講義から臨床薬剤師養成に必要な医療系講義まで体系的に幅広く開講します。
<修士課程>
修士課程の教育課程は,講義,演習,課題研究によって編成しています。講義は基本的に両専攻共通で,学生の研究課題,進路によって自由に選択できるようにしています。また,大学院特別講義として外来講師による学内セミナーを開講し,それを必修とし,最新の研究から知識,技術などを学び取ることができるようにしています。
演習は「演習I」と「演習II」に分かれており,「演習I」は課題研究を推進するために必要な文献調査やプレゼンテーション能力の養成を主な目的とし,「演習II」は臨床薬剤師として必要とされる知識,プレゼンテーション能力の養成を主な目的とします。
また,課題研究はそれぞれの専門分野における研究能力を向上させるための授業という位置付けになっており,修士論文の作成につながるものです。
また,医療薬学専攻は,提携先病院において6ヶ月以上の実務研修を受けることを必修化しており,医療現場において高度な職能教育を行います。研修終了後には,大学院指導教員,研修施設の指導薬剤師も参加した研修報告会を実施します。特に希望者には医療薬学の先進国であるアメリカやオーストラリア等における研修もカリキュラムに組み込んでおり,それらの国の薬剤師が医療現場でどのような役割を果たしているかを研修し,体得できるようにします。また,近年活発化している慶應義塾の海外協定締結校との積極的な学生交流・留学を活用し,全学的な組織である国際連携推進機構を中心として薬学の分野の国際的な視野に立った教育研究指導の体制を整備していく予定です。
<博士課程>
博士課程は研究能力の向上を目指しており,講座を中心にして研究指導を受けます。同課程は特に授業は単位化していませんが,必要な授業は講義,演習,実験等の形で随時行っていきます。薬学専攻では教員と一緒になっての研究を通して,将来大学や製薬会社等の研究者として自立して研究できる力を学んでいきます。医療薬学専攻では,医療現場での研修を通して,将来臨床薬剤師として医療チームの一員となり,患者の医療に貢献できる力あるいは現場の薬剤師を指導する力を身につけます。
博士課程の学生の国際交流については,修士課程とともに積極的な学生交流・留学の体制の整備を図ると共に,全学的な組織である国際連携推進機構を中心として薬学の分野において国際的な視野に立った教育研究指導の体制を整備していく予定です。
(慶應義塾大学薬学部・大学院薬学研究科Webサイト http://www.pharm.keio.ac.jp/ より転載)

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