KEIO MCC

慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

今月の1冊

2008年01月08日

環境元年 ―いまふたたび、エコのおススメ―

お元気ですか?新しい年がはじまりましたね。私からの年始のご挨拶は、今年も「今月の“1冊”」になりました。幸せと希望が溢れる一年になりますように。
さて、お正月に欠かせないモノといえば、年賀状ですね。変わらぬ筆跡に、かきびとのお顔を思い浮かべる風物詩。そんな年賀状に、今年から「カーボンオフセット年賀状」というものが加わったことに、皆さんはお気づきでしたか?
http://www.carbonoffset-nenga.jp/
“カーボンオフセット”とは、日常生活や企業活動において発生した二酸化炭素(CO2)を、植林や環境団体への寄付を行なうことなどで相殺することをいいます。できるだけCO2削減に取り組み、様々な省エネを実行した上でそれでもなお削減できないCO2排出量を、植林やクリーンエネルギー事業への投資を行なうことで“埋め合わせる=offset”という考え方です(CO2を直接、間接的に貨幣に換算することについては様々な意見があるようです)。
「カーボンオフセット年賀状」は定価55円で販売され、このうちの5円が寄付金となってCO2削減プロジェクトに貢献するとされています。


今日は、どうしてカーボンオフセットが注目され始めたのかを探ってみるとともに、2008年が日本を含む世界各国にとって、いわば“環境元年”であることについて考えてみます。そして、私もメンバーに入っている「チーム・マイナス6%」をご紹介しながら、エコのおススメをしたいと思います。
季節はずれの台風、世界で起こる干ばつや海水温の上昇といったニュースに、“地球温暖化”という言葉を思い浮かべるひとが増えてきました。CO2などの温室効果ガスによって地球の温暖化が促進されると言われている中で、日本でも官民様々な省エネ活動が推進されています。CO2の排出にはエネルギー消費が大きく関係しますから、私たちの暮らしのエネルギーを低減していく活動が行われているわけですね。“クールビズ”や“ウォームビズ”といったアプローチ、アイドリングストップやエコバックの推奨などもその例です。“エコ”や“ロハス”といった言葉も、随分浸透した感があります。ですが、そうした省エネ活動を行なってもなお発生してしまうCO2について、新しい仕組みを使ってCO2排出量を実質的にゼロに近づけるということが、カーボンオフセットの根底にある考え方です。これは、元々イギリスで始まった考え方ですが、最近では欧州全体、米国、豪州等で取組みが始まっており、日本でも注目され始めています。例えばイギリスでは、搭乗者自身がフライトで排出されるCO2をオフセットできる仕組みを航空会社が運用しており、また、税金とカーボンオフセットを連動させる仕組みを採用している市も存在します。
そもそも、こういった取組みが注目される大きなきっかけは、16年前にさかのぼります。

  • 1992年国連で、大気中のCO2等温室効果ガスの濃度を安定化させ、現在及び将来の気候を保護することを目的として、気候変動枠組条約が締結されました。
  • 1997年には、京都で開かれた会議(COP3)において、前出の目的を達成するために、先進国に対し2008年~2012年に温室効果ガスを1990年比で一定数値分削減することが義務づけられた京都議定書が採択されました。ここで日本は、1990年比でCO2の排出量を6%削減することを世界と約束しました。最近よく耳にする「チーム・マイナス6%」という数字は、これが発端です。

しかし、昨年11月に環境省が発表した2006年度のCO2などの温室効果ガスの国内総排出量は、1990年度比で6.4%増加していることがわかったそうです。つまり、減らすどころか右肩あがりで増えてしまっているのです。大きく増加しているのは、一般家庭やオフィスビルからなる分野で、核家族化が進み世帯数が増加したことや、オフィスのOA化が急速に進展したことなどが原因と推測されています(環境省・2006年度温室効果ガスの排出量速報値 http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=9002)。
このような現状の中で、私たちにできること、いや、私たちがやらなければならないことは何かを考えてみました。

  1. 地球温暖化問題が、自分と無縁でないことに気づく
  2. 地球温暖化によって起こっている現象や、社会の活動を知る
  3. できることから、始めてみる

私たちが生きていくことには、必ずエネルギーの発生が伴います。オフィスを照らす電灯や家族を乗せて走る車、今朝揺られてきた電車・・・自分が、温室効果ガスの発生、そして温暖化問題と無縁ではないと気づくことが、最初の第一歩。
次に、世界で起こる温暖化が原因とみられる現象や、将来危惧される状況を理解すること。社会の構成員のひとりとして、国や自治体の取組みを知ること。これは、環境省やエネルギー会社のwebサイトをはじめとして、様々な情報源から手に入れることができます。
そして、最後は行動です。電灯をこまめに消す、シャワーを出しっぱなしにしない・・・等々、身近に紹介されている省エネアクションのうち、自分で取り組めそうなものを選んで、まずは実践してみませんか。照明を白熱灯から蛍光灯に替えることだけでも、大きな効果があると言われています。光熱費が下がれば家計にも優しい活動ともいえるわけで、エコを意識して生活することは“家計の省エネ”につながります。“省エネ”という言葉は使い古された感がありますが、2008年という年の始まりを契機に、もう一度見直してみることも良いかもしれません。
そして、こうした個人の活動の集大成ともいえるのが、温室効果ガス排出量6%の削減を実現するための国民的プロジェクト「チーム・マイナス6%」です。
「チーム・マイナス6%」には、200万人を超える個人と17,000を超える法人が参加しています。
皆さんは、小学校の国語の教科書に、スイミーというお話があったことを覚えていらっしゃるでしょうか?小さな魚たちが群れをなして泳ぐことで、大きな魚を追い払うという内容ですが、このスイミーのように、地球温暖化という問題に対して一人一人が「1人1日1kgのCO2排出量削減」達成すれば、大きな成果につながるのではないでしょうか。
このWebサイトでは、CO2削減のための6つのアクションプランを設定し、省エネ活動を推進しています。また、実際に自分の省エネ活動によりどれだけCO2を削減できるのかを換算できるようになっており、例えば電気の使い方を考えてみても、暖房の利用時間を1時間減らすことによって37gのCO2削減に寄与できるそうです。チームには、誰でも参加することができます。チーム員登録をすると、チーム員ナンバーとバナーがもらえ、行動することから伝えることへとつながっていきます。
温暖化の影響を大きく受けるのは、私たちの次の世代だといわれています。
「宇宙から見る地球には国境がない」、そう話した宇宙飛行士の方がいました。温暖化問題を、民族や国や世代を超えて、私たち人類の存亡そのものがかかっている・・そんな風に捉えることは、果たして大げさなことでしょうか。
CO2を削減することは、単に京都議定書という世界各国との約束を守るためだけのものではなく、将来を担う世代に対する心からの優しさなのだと、私は思います。
既にご存知のように、2008年は京都議定書における第一約束期間に入るとても重要なスタートイヤーであるとともに、環境・気候変動を重点テーマのひとつとした北海道洞爺湖サミットが開催される年でもあります。まさに日本が「環境立国日本」として、真のリーダーシップを発揮できるかどうかの、とても大きな意味をもつ一年です。
この年始には、北海道洞爺湖サミットのロゴマークが、発表されました。「G8」(主要8か国)の文字が中央に配された青い地球の中の種子から、若葉が発芽するデザイン! この小さな芽が未来に育っていくように、この地球に暮らす一員として、皆さんもご一緒に第一歩を踏み出してみませんか。
そう、未来の子供たちのために。
(中西真紀)


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