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松本 晃「カルビーはどうやって変わったのか」

2015年09月08日

講演日時:2015年5月22日(金)
松本 晃
カルビー株式会社 代表取締役会長兼CEO

松本 晃

このレビューは2000字が目安、と事務局から言われている。しかし面白い講演だとつい字数が増える。前回の私の原稿は2500字だった。
カルビーではこれは許されない。計画が100%なら実績は100から101%に収めなくてはいけない。90%はもちろん、110%も「90%と同じだけ悪い」。
能書きが長いとそれだけで松本会長に怒られそうだ。本題に入る。

長らく創業者一族が経営してきたカルビー。松本氏は6年前、請われて会長兼CEOに就任。以来、売上は年平均9%、利益は同21%伸び、6期連続で最高益を更新。
http://www.calbee.co.jp/ir/finance.php
東日本大震災の日に上場した株価は、4年間で9倍に上昇。
http://www.calbee.co.jp/ir/chart.php
松本会長はカルビーをどう変えたか。一言でいえば「古い仕組みと悪しき文化を変えた」。

まず「経営」を「1.世の為、人の為に」「2.儲けること」と定義。
そして全ての土台となる「Vision」を定めた。

カルビーグループビジョン
顧客・取引先から、次に従業員とその家族から、
そしてコミュニティから、最後に株主から
尊敬され、賞賛され、そして愛される会社になる
http://www.calbee.co.jp/company/rinen.php

特徴的なのは優先順位が明言・公言されていること。殊に株主を最後に位置付けた。この順番を間違えると株主も儲からない。
参考にしたのは自身が日本法人社長を務めたジョンソン・エンド・ジョンソンで、72年間続く「Our Credo」。本講演唯一の配布資料がこれだった。
https:/www.jnj.co.jp/group/credo/
このVisionの上にPlanを立てる。海外売上比率30%以上、国内スナック菓子市場でシェア60%以上、売上高営業利益率15%以上、と数字を明示し「なりたい姿」を宣言する。
http://www.calbee.co.jp/ir/management_policy.php
そのPlanをLeadershipで実行する時、経営の三要素が適切な順番で揃う。

変革の具体論に入る。

「人‐組織‐仕組み」。この連動する三者のどこから手を付けるか。大抵の会社は「人」を変える。人は組織を変え、それで満足する。古い仕組みは温存され、結局何も変わらない。
カルビーは「仕組み」から変えた。仕組みが変われば組織が、組織が変われば人が変わる。

「仕組み」を変えるというと、新しい手法や取り組みに飛びつきがちだ。しかし、古い仕組みで疲弊した組織に新しいものを入れても消化不良に陥るだけ。松本会長は、まず「やめるべきことをやめる」ことから始めた。

やめたことのひとつが、データに基づくコクピット経営。それは、間違いではないが、難し過ぎた。飛行機のコクピットでなく車のダッシュボードくらいがちょうどいい。測るものが少なければそれだけ会社は良く見通せる。

カルビーの主原料は馬鈴薯。以前はデータに基づき翌年度の精緻な販売計画を立て、それに合わせて生産計画を立て、それに合わせて馬鈴薯を購入していた。結果、工場稼働率は6割に低迷し、コスト高の要因になっていた。
今は契約農家にフル生産させ、それを全量買う。買った分だけ商品を作る。「買う」と「作る」を難しく考えるのをやめ、「売る」ことに専念する。カルビーの強みは美味しさ。売れ残りも値下げすれば必ず売れる。売り切ればシェアが高まる。工場稼働率は9割超になり、固定費は削減、そして利益増。値下げで顧客に還元し、更にシェア上昇、という好循環が形成された。

「仕組み」を単純化する。その単純なことができない経営者が多い。松本会長は言う。「頭の良すぎる人は経営を複雑にしてしまう。自分は、頭の出来は中の上。難しいことはわからない。だから簡素化し、透明化し、分権化する」
 
「仕組み」を変えれば「組織」が変わる。
その象徴が本社。5年前までは9階建てビルだった。「人間は縦には動かない。だから風通しが悪かった」。今は横長のワンフロア。個室ゼロ、会議室はひとつ(ガラス張り)。固定席もなく、社員は4時間ごとにランダムに席替え。
定例会議は原則廃止。情報共有や報連相は時間のムダ、訊きたい時だけ訊きに行けばいい。現場に行け。
仕事が終わればさっさと帰る。求めているのは時間でなく成果。報酬は成果に対して払う。だから女性が子育てしながら役員にもなれる。ダイバーシティの実践、それができない企業に未来はない。

「組織」が変わると「人」が変わる。

コストに対する意識。いま自分が使おうとしているそのお金は投資/Investmentか費用/Expenseか。それを顧客に負担させるのが妥当か。

分権化による意欲喚起と人材育成。
責任を持つと人は元気になる。自分で考えるようになる。失敗もする。でも失敗しないとわからない。
ムダなプロジェクトチームは作らない。個人か少数精鋭でやらせる。少数でやらないと精鋭にならない。

変革に対して松本会長は剛腕だ。だがワンマンではない。
何をやるか、どうやるかは、むしろ徹底的に社員に任せている。そこに、カルビーのLeadershipのスタイルがある。

毎年行う「7年後の夢を語る会」。幹部を含む数十人で、1日目はひたすら夢を語る。2日目は夢を実現するために何をしたらよいかを語る。最後にトップがその中から「やること」を決める。
みんなが夢を持ち、それを実現しようと努力する。そんな「夢経営」が、カルビー躍進の原動力だった。

(本文2005字)

(白澤健志)

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