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正能 茉優「好きなこと“も”仕事にする パラレルキャリアという働き方」

2021年04月13日

正能茉優
ハピキラFACTORY 代表取締役社長
大手電機メーカー正社員
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 特任助教
講演日:2020年1月31日(金)

正能茉優

株式会社ハピキラFACTORYの社長であり、大手電機メーカーの社員であり、さらに慶應義塾大学大学院の特任助教でもある正能茉優さんは若干28歳。有識者として政府機関に招かれたりテレビのコメンテーターも務めるなど、その実績からは女性特有の華やかさだけでなく骨太な印象も受ける。

起業までの道のり

講演は、正能さんがご自身のキャリアを語るうえで欠かせないハピキラFACTORYの設立にまつわるエピソードからスタートした。

大学時代、「町づくりインターンシップ」の制度の存在を知った正能さんは、特に深い考えもなく長野県小布施町に出向く。最初は「何もない町だなあ」程度の感想しか持たなかったが、2週間ほど滞在するうちに小布施の人たちに魅力を感じ、さらには町そのものが大好きになったそうだ。
この出会いによって「幸せ」の価値観すらひっくり返された正能さんは小布施の魅力にとりつかれ、小布施と東京をいったりきたりする暮らしを始める。

やがて小布施町長に「学生版のダボス会議をやらないか」と持ちかけられたことから、2年ほどの準備期間を経て「小布施若者会議」を開催することになる。全国から240名の若者が集まりイベントは大成功をおさめたものの、女性の参加者が少ないことに気づいた正能さんは「小布施の魅力が女性に伝わってないことが原因なのではないか」と思うようになった。

さて、小布施には「栗鹿の子」というとてもおいしいお菓子があるそうなのだが、若者にはピンとこない包装のため、お土産として友人に配る際にいちいち「こういう見た目だけどすごくおいしいの」と前置きしなくてはならなかった。この経験から「お菓子をきっかけにすれば、若い女性にも小布施町の魅力を知ってもらえるのでは」と考えた正能さんは、「栗鹿の子」のパッケージを変更し「かのこっくり」という商品名で販売するアイデアを実行に移す。

しかし、気楽に始めたプロジェクトは、女子大生ならではの見立ての甘さにより思いがけない方向に転がっていく。
無邪気にメディアに売り込んだところまさかの雑誌掲載が決まり、工場でパッケージを大量生産しようとしたら当初の予定数では最低ロットに満たないと教えられて、今さら止めることもできずあれよあれよという間に膨大な在庫を抱えることに。ひとりではとても捌ききれないので渋谷PARCOに売り込みに行ってめでたく販路を獲得するものの、個人では百貨店と取引できないため「それでは」と起業したのがハピキラFACTORY。大学3年生の冬の話だそうだ。

なりゆきまかせ、だけじゃない

前段の話は一見するとすべてがなりゆきで進んでいるように見えるが、そこには正能さんの”何事にも真剣に取り組むひたむきさ”と”類いまれな行動力”という2つの要素が不可欠だ。なんの興味も無い町に出向き、その町の良いところを積極的に見いだし、2年もの時間をかけてイベントを成功させ、売れる保証のない商品を製造してメディアへ売り込み百貨店と取引する。こんなこと、どれだけの人が実践できるだろう。しかもハタチそこそこで。

さかのぼると、正能さんは小学校から高校まで読売新聞の子ども記者として活動していた経歴がある。記者活動を通して作家の石田衣良さんややなせたかしさんなどさまざまな著名人と出会い、感銘を受けたそうだ。
そんなふうに、子ども時代から大人たち(しかも、特定の分野で抜きん出た)と接する機会を持つことで育まれた思考やある種の余裕のようなものが備わっていたことも、当時の正能さんの行動に影響したように思う。

「流れに任せた結果です」「周囲の求めに応じているうちに、いつの間にかこうなりました」—-これらの言葉は、輝かしいキャリアを重ねた人が自身の経歴を語るときによく登場する。これだけ聞くと、運命に抗わずにさえいればいつの間にか全てがうまく運ぶような気がしてくるのだが、それは錯覚だ。
人生を順調に歩んでいる人はただ流れに身を任せているのではなく、正しい道を選び取る嗅覚が自然とはたらいている。と同時に、選んだ道を”正解”にするためのたゆまぬ努力を続けているからこそ、結果、すべてがうまくいっているように見えるのだ。

“オンリーワン”になるために

講演の中で正能さんは「わたしたちミレニアル世代は、すべて65点でいいからバランスよく生きていきたいんです」とおっしゃっていたが、他の20代はともかく正能さんが65点で満足しているとはとても思えない。わたしにはバリバリの仕事人間に見える。
ま、それは置いておくとして、働く時間を短縮しつつそれなりに稼ぐには自分(の時間)の価値を高めるしかない。「価値を高めよう」→「”オンリーワン”になろう」→「『○○なのに△△』の方程式にたどりつきました」のくだりは、お話を聴きながら心の中で拍手喝采した。

いわく、世間に女子大生社長はたくさんいるので、それだけをセールスポイントにしていたら埋もれてしまう。でも、
「社員なのに社長」
「助教なのに社長」
というパッケージなら世間は注目する。みずからが選ばれる理由を増やすことができる。
……なんという戦略家だろう! すばらしい!!

最後に、正能さんが講演中に発した言葉がなかなかのパワーワードだったので紹介しておこう。
「ちゃんちゃらぴー」(ご自身の大学時代を指して)
「うんちゃらってお店のうんちゃらってお菓子」
「不満ぷーたら人間」

いつもはお堅い雰囲気の夕学五十講なのに、今回は客席からクスクス笑いが何度か起こったりして、間違いなくオンリーワンな90分でした。
そのハピキラな魅力で、これからの日本をますます明るく照らしてください!

(千貫りこ)

正能 茉優(しょうのう・まゆ)
正能 茉優
  • ハピキラFACTORY 代表取締役社長
  • 大手電機メーカー正社員
  • 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 特任助教
1991年東京生まれ。小6から高校まで読売新聞子ども記者に。慶應義塾大学総合政策学部在学中の2012年に「小布施若者会議」を創設し、2013年ハピキラFACTORYを創業。卒業後は、広告代理店に就職。現在はソニー(株)に転職し、(株)ハピキラFACTORYの社長も勤める「パラレルキャリア女子」。
その経験を生かし、2016年経済産業省「兼業・副業を通じた創業・新規事業創出に関する研究会」最年少委員に。北海道天塩町の政策アドバイザーも務める。ハピキラでは、日本郵便とのコラボ「若者リクエスト」プロジェクトで、地方にある魅力的な商材を女性・若者目線でプロデュース・発信中。また昨年で第5回目となった小布施若者会議は、人財ネットワークに成長中。

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