夕学レポート
2005年08月09日
和田 裕美 「営業のテクニックなんていらない~わくわくしさえすれば人は動く~」
和田裕美 株式会社ペリエ 代表取締役社長 >>講師紹介
講演日時:2005年6月14日(火) PM6:30-PM8:30
世界ナンバー2の営業成績を残した営業ウーマンと聞くと、押し出しが強く大またで闊歩するイメージが浮かびます。しかし、和田裕美氏はそんなイメージとは正反対です。第一印象は、控えめでおとなしそうな女性です。しかし、いったん話しだすと、論理明快な内容が、魅力的な声や表情、しぐさと共に展開されます。聞き手はいつのまにか引き込まれ、あっというまの2時間でした。和田氏がスーパー営業ウーマンであることに、もはや疑いの余地はありません。
まず、和田氏は、そもそも「営業ってなんだろう?」と問いかけます。和田氏の考えは、「目の前の人(お客さま)から好かれる人になり、黙っていても、契約のYESが取れること」です。なぜならば、人は、話しやすい人、好きな人からものを買いたいと思うものだからです。また、営業は、相手が聞きたいことだけを伝えることができなければなりません。そのために、相手の望んでいるものが何かを探れるよう「聞き上手」になる必要があります。もし、相手のニーズを無視した強引な押し付けをしてしまうと、たとえ売れてもリピートはありません。永遠に新規客を追わざるを得ず、営業という仕事がつらいものとなり、モチベーションが下がります。むしろ、営業は、自分が売る製品の良さを心から信じ、この製品であなたは幸せになれますよ、という気持ちでお客さまの背中を押せる人です。強引な押し込みではなく、ちょっとお節介な人になればいいということです。和田氏自身、このような姿勢で臨まれた結果でしょう、営業ウーマン時代の売上の4割が紹介とリピートで占めていたそうです。
さて、和田氏は、営業の土台として「人間性」が重要だそうですが、営業テクニック以前の大切な考え方として次の3つの考え方を紹介してくれました。
1.陽転思考
営業の仕事では、他の仕事以上に、お客さまから拒絶や罵倒の言葉を浴びせられる回数が多くなります。したがって、メンタルに強くならなければなりません。元気の出る映画や本を見たり読んだりするのもいいのですが、それらは一時的な効果しかありません。むしろ、和田氏は、自分で考え方を切り替える方法を学ぶことが必要だと気づいたそうです。たとえば「雨が降っている」という事実に対して、いやだなと思うのか、ラッキーと思うのか、受け取り方は2つあります。人はこのどちらが良いかと聞かれたら選べるものです。和田氏はいつも、最悪と最良を並べてどちらを選ぶかと聞いて、考え方をプラスの方向に切り替えることを勧めてきました。これが陽転思考です。
2.単純思考
おいしいものを食べたら、分析的に評価するのではなく、素直に感情に表して「おいしい」と言える、そんな人が営業には向いているそうです。物事を複雑ではなく、単純、シンプルに捉え、気持ちで感じることができることが大切だそうです。
3.感情移入
商品知識が十分なのに売れない理由には、表現能力が弱いことがあります。つまり、感情のこもったやりとりをお客さまとできることが、営業をやる上での土台です。
和田氏は、さらに、上記の営業の土台の上に立てていく柱として次の3つを挙げます。
1.知識能力
一つ目の柱は知識能力。商品自体の知識も重要ですが、競合他社商品についての十分な知識もないと、自社製品の違いや良さをお客さまに説明することができません。知ったかぶりはすぐにばれてしまいます。結局のところ、お客さまを買いたい気持ちにさせるのは「お得感」であり、それをきちんと説明できるだけの自社製品、他社製品の知識を習得することが求められるのです。
2.情緒能力
2つめの柱は、情緒能力、すなわち、心優しく、思いやりにあふれ、笑顔が豊かな感情表現を身につけることです。和田氏の部下として新しく入社してきたある女性は、当初まったく売れなかったそうですが、その原因は、笑顔のほとんどない固い表情にありました。ちょっと微笑んでも一瞬で元に戻ってしまう。和田氏は、この女性は「笑顔の持久力」が低いのだとわかって、笑顔を持続できるトレーニングをやったそうです。また、情緒能力とは、機転が利く、気が利くということでもあります。お酒の席などで、いろいろと気配りができる人は情緒能力が高い人だと判断できるそうです。
3.意識能力
3つ目の柱は、「プロ意識」です。和田氏にとってのプロ意識とは、向上心、つまりもっと上に行きたいという気持ちです。和田氏が以前勤めていた英語教材を売る会社では、個人の成績がいいとチームキャプテンになり、さらにチームの成績に応じて、グループリーダー、フィールドトレーナー、オペレーションマネージャーと昇進していきます。実は、和田氏が、上司に昇進を打診された時、「そんな気はありません、今のままで十分です」と答えたそうです。すると、上司からは入社以来始めてというほどの強いお叱りを受けました。次に何があるかわからないのだから、行ってみればいいじゃないか、いつでも元にも戻れるのになぜチャレンジしないのか、というわけです。和田氏は上司の言葉を受け入れ、その会社では、支店長や企画部長を歴任し、多数の部下を抱える立場になりました。和田氏は、昇進して見えてきた新たな気づきや発見があったので昇進してみてとてもよかったと、今では思っているそうです。
和田氏は、営業は、自分の商品やサービスを心から信じる気持ちがないと不安になってしまうといいます。商品にはプラス面・マイナス面があり、マイナスにこだわっているとプラス面でさえ不安になり、お客様に伝わってしまう。売れない人は、自分や商品に不安があるから。「自分の商品はぜったい相手を幸せにできる!!」と、そのくらい強く信じる気持ちが大切なのです。未来はきっとよくなると信じること、きっと相手を幸せにできると信じること、自分の商品はすばらしいと信じることができること。そうすれば、お客さまの幸せを心から願って背中を押すことができるようになるのです。
営業の仕事はノルマとかがあってとても大変そう、という固定観念をほとんどの人が持っていると思いますが、和田氏のお話を聞いたおかげで、実は「営業はとても楽しい仕事なのだ!」という認識に完全に切り替わってしまいました。受講された他の方々も同じように説得されてしまったのではないでしょうか。
主要図書
『営業のビタミン』ひつじ書房、2002年
『世界no.2セールスウーマンの「売れる営業」に変わる本』ダイヤモンド社、2003年
『和田式「営業」クリニック』明日香出版社、2004年
『営業脳をつくる!』PHP研究所、2004年
『こうして私は世界no.2セールスウーマンになった』ダイヤモンド社、2004年
『営業のビタミン-プラス・アルファ-』三笠書房、2005年
推薦サイト
http://www.perie-net.co.jp/ (株式会社ペリエ)
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