HOMEへ戻るMCCマガジン田村次朗(慶應義塾大学法学部教授)

田村次朗(慶應義塾大学法学部教授)

2021年05月11日

慶應MCCにご登壇いただいている先生に、影響を受けた・大切にしている一冊をお伺いします。講師プロフィールとはちょっと違った角度から先生方をご紹介します。

田村次朗(たむら・じろう)
  • 慶應義塾大学法学部教授
  • ハーバード大学国際交渉学プログラム・インターナショナル・アカデミック・アドバイザー
慶應MCC担当プログラム

1.私(先生)をつくった一冊をご紹介ください

13日間ーキューバ危機回顧録
ロバート・ケネディ (著), 毎日新聞社外信部 (翻訳)

2.その本には、いつ、どのように出会いましたか?

ハーバード・ロースクールの留学を終えるとき、交渉学の研究をさらに続けるには、必ずキューバ危機のことを勉強すべきであるとフィッシャー教授から言われていました。
日本に戻った私は、 まず原文を英語で読み、その後、今回ご紹介したこちらの本を読みました。1980年代後半だったと思います。

3.どのような内容ですか?

「交渉学」「対話学」という学問が生まれたのは、歴史上のすぐれたリーダーによる実際の交渉や対話、その中で彼らが発揮したリーダーシップに関する研究の成果によるものです。

その代表的なものがキューバ危機であり、とくに国家安全保障委員会における会議の進め方には、現在の対話学で教える「対話のプロセス」の原点がそこにあると言えます。

すなわち、ケネディ大統領が先制攻撃をするか否かという2択を迫られた時に、弟のロバートがより多くの選択肢を出し(具体的には6つの選択肢)、全員に議論させたことでグループ・ダイナミックスが起きたのです。結果として、相手と交渉し、紛争の原因究明に努め、海上封鎖という賢明な行いを選択する、という見事な解決を導くことができました。

しかし、その後も宗教対立、民族対立など世界中で紛争は絶えず、COVID-19を引き金にさらなる大きな対立によって世界が分断されつつある現在、これまでの知恵や学問に対する挑戦が多々起きています。

こういった深刻な状況を乗り越えるべく、私が共同研究に携わっているハーバード大学教授のダニエル・シャピロ氏は著書『Negotiating the Nonnegotiable』(Penguin Books)の中で、最先端の対話のプロセスを提示しています。(日本語版 『ネゴシエーション3.0』(田村次朗・隅田浩司監訳))
彼の教えが世に広まり、平和への足掛かりになることを願っています。

4.それは先生にとってどんな出会いでしたか?

人類最大の危機に直面した緊張感張り詰める会議の場で、普通の会議ですら難しいブレイン・ストーミングを実践し、多くの選択肢を生み出したことにケネディ兄弟のリーダーシップを感じ、感銘を受けました。

5.この本をおすすめするとしたら?

人は必ずビジネスでも日常生活でも会議や交渉を行います。しかし、単なる経験に基づいて行っていることが多いものです。そういうすべての方々に、人類最大の危機の際に行われた交渉と会議のマネジメントについてぜひ知っていただきたいと思っています。
それは必ずや日々の交渉や対話のヒントとなり、生きていく上での大きな助けになるからです。

13日間ーキューバ危機回顧録
著:ロバート・ケネディ ; 翻訳:毎日新聞社外信部 ; 出版社:中央公論新社; 発売年月:2014年4月改版;

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