HOMEへ戻るMCCマガジン高橋俊介(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授)

高橋俊介(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授)

2022年01月11日

慶應MCCにご登壇いただいている先生に、影響を受けた・大切にしている一冊をお伺いします。講師プロフィールとはちょっと違った角度から先生方をご紹介します。

高橋 俊介(たかはし・しゅんすけ)

高橋俊介

  • 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授
慶應MCC担当プログラム

1.私(先生)をつくった一冊をご紹介ください

タテ社会の人間関係
中根千枝
講談社現代新書
1967年(昭和42年)

2.どのような内容ですか?

社会人類学者としてインドをはじめとする海外のフィールドワーク経験の豊富な著者が、「ウチとソト」「社員は家族」「能力より年功」「職種より社名」などを重視する日本人の意識や日本社会の構造の特徴を「タテ社会」と表現したロングセラーです。

さらに、日本人は地域や趣味といった複数のコミュニティに属するのではなく、「会社という一つの社会に圧倒的に属する」という世界に類を見ない特徴が書かれています。

3.その本には、いつ、どのように出会いましたか?

大学卒業後、最初に国鉄に就職して比較的時間があった若いころに読みました。
この本にも触れられていますが、当時の国鉄は親子三代国鉄職員も珍しくない「国鉄一家」という考え方にもとづく絵に描いたようなタテ社会でした。そのころの私は「単一社会に圧倒的に属する自分」に違和感を感じてきていたので、非常に腹落ちしました。

4.それは先生にとってどんな出会いでしたか?

人と組織の世界観ゼミナール』などで長く活用してきましたが、作者 中根千絵さんの昨年11月の訃報をきっかけに改めて自分が人事組織の仕事に携わるきっかけとなった、非常に大事な一冊であったと思い出しました。

すべてのことは良し悪しや一般論では語れない、という概念の原点になったとも思います。ある環境においては強みであっても、状況が変われば足かせになることはよくあります。

日本はタテ社会、それも「会社」という一つのタテ社会に所属が集中している唯一の国です。それは日本の特異点的強みであり、戦後の産業発展に大いに貢献した側面がありました。たとえば電車のオペレーションは強いタテ社会だからこそ世界トップレベルの安全性と正確性を達成維持できています。
しかし環境やビジネスモデルの変化によって、この特異点的強みが生きなくなってきていることを感じます。

5.この本をおすすめするとしたら?

経営、人事、組織、マネジメントに携わる人は絶対に読むべきです。海外との比較も含め、良し悪しではなく、日本の企業はこう考えればいいのかという発見がたくさんあります。

あわせてお勧めするのが、こちらも多くの方がご存じの『安心社会から信頼社会へ―日本型システムの行方』(山岸俊男著、1999)です。過去に「安心社会」の形を残したまま産業化に成功した日本の特異な強みから、「信頼社会」へのシフトを目指すロングセラーです。

タテ社会の人間関係』講談社現代新書、1967年(昭和42年)

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